テニス:休養、ストレス、肉体的サバイバル——あまり知られていないオフシーズンの真実
毎年、ATPとWTAのカレンダーにおける最後のトーナメントのスポットライトが消えると、別の試合が始まる。
それは飛行機の中で、人気のないウェイトトレーニングルームで、遠く離れたビーチで、あるいはプライベートのトレーニングセンターで行われる。いわゆるオフシーズンの戦いだ。短いが極めて重要なこの期間に、来シーズンのパフォーマンスが鍛えられ、あるいは脆くなっていく。
長い間、単なる「合間の期間」と見なされてきたオフシーズンだが、今や戦略的な意味合いを持つ大きなテーマとなっている。フィジカルの回復、メンタルの解放、個別のトレーニング、そしてシーズン全体の計画まで、現在のオフシーズンは、シーズン、さらにはキャリアの軌道すら変えうるピースが集まった、繊細なパズルのようなものだ。
本稿では、この冬の中断期間が実際どのように構築されているのかを解説する。この決定的な時間は、あまり知られておらず、ときに過小評価されているが、常に重要な意味を持っている。
生命線としての役割:なぜオフシーズンは欠かせない存在になったのか

ATP・WTAツアーのカレンダーは、プロスポーツの中でも最も過酷な部類に入る。トーナメントは途切れることなく続き、移動は増え続け、試合はときに極端な気温の中で長時間に及ぶ。
身体はダメージを受け続け、週ごとに環境が変わることで感覚もリズムも狂い、フィジカル面でもメンタル面でも疲労が慢性化していく。
多くの選手にとって、オフシーズンはこの「消耗のレース」に入り込む唯一の隙間だ。しかしその期間はしばしば、デビスカップやビリー・ジーン・キング・カップの決勝のような年末の大会や、年末のエキシビションマッチに食われて、ほんのわずかに縮められてしまう。
フィジカル・プレパレーション(身体づくり)の研究はこう示している。シーズンをしっかり「消化」できなければ、ケガ、慢性疲労、レベル低下のリスクは劇的に高まる。本当の意味での区切りがなければ、パフォーマンスは思っている以上のスピードで落ちていく。
うまく管理された休養の重要性は3つある。フィジカルの回復、メンタルの再生、そして新シーズンに向けた土台づくりだ。選手の中には、「10〜15日間の完全なオフこそが、テニスや日常生活へのモチベーションを取り戻す唯一の方法だ」と率直に語る者もいる。
オフシーズンの3つの大きなフェーズ:選手ごとにカスタマイズされる基本形

普遍的なモデルは存在しないが、プロたちのオフシーズンは、おおむね3つのフェーズで構成されている。
フェーズ1:完全なオフ
特にフランスでは、コーチたちはよく「10〜15日間の完全休養」を勧める。ラケットも握らず、ジムにも行かず、ときには強度の高い運動すら行わない。選手がすべてを手放し、バカンスに出かけ、家族と時間を過ごし、いつもの環境から離れる時期だ。
最近の例としては:
– カルロス・アルカラスは、メディアのプレッシャーから離れるため、故郷でもあるバレアレス諸島で家族や友人との時間を過ごすのを好む。
– ノバク・ジョコビッチは、カリブ海のタークス・カイコス諸島にある、世界でも屈指の高級リゾート「アマンヤラ」で心身をリセットした。
– アリーナ・サバレンカは、モルディブの高級ホテルでオフを過ごした。
– ヤニック・シナーは、シーズン前トレーニングにすぐ入れるよう、ドバイでオフを取るのを好む。
この「完全オフ」は欠かせない。身体が蓄積したマイクロトラウマをリセットし、筋肉を休ませ、メンタルを競技のトンネルから解放する役割を担っているからだ。
フェーズ2:やわらかい再始動と段階的な負荷アップ
しっかり休養を取り終えたら、選手たちは徐々にエンジンをかけ直す。ジョギング、バイク、スイミング、モビリティ(可動域トレーニング)、体幹トレーニングなどを通じて、心肺持久力、全身の筋力、身体の「丈夫さ」を、無理なく再構築していく段階だ。
このフェーズの中心にあるのはケガ予防だ。モビリティ系のエクササイズや、テニスで特に酷使される体幹と肩まわりの強化が重視される。
フェーズ3:競技特化かつ高強度のトレーニング
身体が「準備OK」の状態になったところで、最もハードなフェーズが始まる。
スピード、爆発力、アジリティ、インターバルトレーニング、プライオメトリクス(瞬発系トレーニング)など、目的別のフィジカルトレーニングと並行して、ラケットワークを再開し、技術・戦術面を徹底的に磨き込む。フットワーク、サーブ、戦術的な配置や展開などを、ここまで深く修正できるのは、年間を通じてこのタイミングだけと言っていい。
同時にチームは目標設定を見直す。ランキング、フィジカルの目標、カレンダーの微調整、トレーニング量のピークと休養期間の設計などを整理する。
プロが実際にやっていること:完全オフと猛トレの間で

表向きのコメントとは裏腹に、実際の取り組み方は選手によって大きく異なる。
たとえばアレクサンダー・ズベレフは、シーズン後にほとんど休みを取らないと公言している。彼にとっては、「トレーニングジムにいること自体がバカンスの一部」なのだという。これは、メンタル的・フィジカル的な疲弊が強い選手が、完全なオフにすべてを賭けるスタイルとは正反対のアプローチだ。
とはいえ、フィジカルコーチたちの見解は共通している。ハードなトレーニングブロックも、適切なリカバリーがあってこそ意味を持つ。一方で、休みを取りすぎれば、リズムや感覚、筋肉の記憶を失ってしまう。バランスの取り方は、それほど繊細なのである。
終わりなきパズル:オフシーズンを難しくするジレンマ
オフシーズンは、相反する要求が入り乱れる難題でもある。
一方では、身体とモチベーション、メンタルヘルスを守るための休養が必要だ。もう一方では、年間で唯一、じっくりと課題に取り組み、遅れを取り戻せる貴重な時間でもある。
ここで大きな役割を果たすのがメンタルだ。選手たちは心を空にしたいにもかかわらず、スポンサー、メディア対応、収入の大きな柱になりうるエキシビションマッチなど、多くの要請にさらされる。
加えて、シーズンカレンダー自体が年末近くまで変更されることもあり、計画を立てることは一層困難になっている。
変化するオフシーズン:より総合的なアプローチへ

フィジカル面でもメンタル面でもいっそうハードになった現代テニスは、オフシーズンのあり方も変えつつある。いまや、技術・フィジカル・戦術、そしてメンタルを含めた「全体最適」を図る時期として捉えられている。
ケガ予防は、競技生活を長く維持するうえで欠かせないテーマとして、かつてないほど重視されている。テニスは「摩耗」と常に隣り合わせのスポーツだからだ。
さらに、個別化が当たり前になった。年齢、直近のシーズン内容、疲労度、目標、プレースタイルなどに応じて、各選手が自分専用のオフシーズンを組み立てるようになっている。
たとえばかつて、カロリーヌ・ガルシアは、極度の疲労と「有害なマインドセット」を理由に、シーズンを前倒しで切り上げる決断をした。そのことで、翌シーズンに向けた準備(オフシーズン)を見直し、より良い状態で新シーズンを迎えられたと語っている。
限界と未知:まだよく分かっていないこと

理想的な休養期間の長さや、オフシーズンの各モデルが持つ具体的な効果については、さまざまな公開研究が存在している。しかし、推奨内容はコーチによって大きく異なり、フィジカルコーチの間でも見解が割れている。
スポンサー、メディア対応、エキシビションなど、外的要因による制約も大きく、選手の多くは、蓄積した疲労、結果を求めるプレッシャー、そして自身の健康を守る必要性との間で、常に綱渡りのような状態に置かれている。
繊細でありながら決定的な時間
オフシーズンは、単なる休みでもなければ贅沢でもない。翌シーズン、時にはキャリアの一部までも左右しうる「ターニングポイント」だ。
うまく運べば、それは踏み台となる。エネルギーに満ちた状態でシーズン開幕を迎え、頭はクリアで、しっかりした土台の上にプレーできる。逆に、管理が甘かったり短すぎたりすれば、オーバーヒート、モチベーション低下、ケガ、あるいはプレーレベルのじわじわとした低下を招きかねない。
突き詰めれば、オフシーズンはその選手の本質を映し出す鏡だ。自分の身体の声を聞けるか、自分自身をどこまで理解しているか、プレッシャーをどう扱うか、どれだけ賢く計画を立てられるか、そしてどのように自分をアップデートしていけるかが問われる。
表には出にくく、多くのファンの目にはほとんど見えない時期だが、シーズンの行方を想像以上に左右している。トップ選手たちはよく知っている。真の勝負は、しばしばコートの外、こうした時間の中で決まるのだと。
オフシーズンの未来は?
今後数年で、オフシーズンの姿が変わる可能性はあるのだろうか。
過密スケジュール、増大するプレッシャー、高まるフィジカル要求。その狭間で、一部のテニス関係者はすでに「抜本的な改革」の必要性を口にしている。
カレンダーの大幅な見直し、冬場のエキシビションの規制、あるいは公式な「休止期間」の創設。こうした施策は、この繊細な時期を、本当の意味での「再構築の時間」へと変える可能性を秘めている。
テニス:休養、ストレス、肉体的サバイバル——あまり知られていないオフシーズンの真実
テニスは魂を失うのか? 伝統と“非人間的近代化”の狭間で揺れるロボット判定
特集 - サウジアラビア、怪我、戦争、ビジネス:TennisTempleが明かすテニスの魅力的な舞台裏